ARDSについて
今、社会問題となっている新型コロナウィルス感染症は一部の人で重症肺炎(重症肺炎→ARDS) を引き起こすことが知られています。私は今まで、数十例の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の症例の治療にあたりました。今回はその時のことについて少し振り返ってお話ししたいと思います。
1.ARDSの原因
ARDSを引き起こす原因にはいくつかあります⑴ 侵襲の大きな外科の手術後や⑵敗血症などの重症感染症、そして⑶原因不明なことなどなど
2.ARDSの病状
ARDSは発症すると、その病態は一気に進みます。あっと言う間に呼吸状態が悪化し、両肺が真っ白になってしまいます。低酸素状態になり早急に呼吸サポート療法が必要になります。
3.多臓器障害
ARDSになるといろんな臓器に障害が起きて、急速に状態は悪化します。血圧は下がり、尿は出なくなります。これはARDSで呼吸状態が悪くなったからだけではなく、全身に激しい炎症が急激に起きてしまったため全身の臓器が働かなくなってしまったからだと思います
4.播種性血管内凝固症候群(DIC)
これは血液内で激しい炎症が起きて、血管の中で血が固まりやすくなってしまいあちこちで血栓が生じてしまう状態です。ARDSでは高率にDICが見られます
5.治療
このようにARDSは複雑な病態で、全身状態が急速に悪化するので、早急かつ適切な治療が求められ、多臓器不全になった時には人工臓器を用いた集中治療が必要になります
#私の経験では、ARDSは本当に一気に進むので、最初からフルコースの治療(呼吸、循環管理、血液浄化の準備、輸液、栄養管理、DIC治療、感染治療など)が必要になります。
6.予後
ARDSは一度起きると急激に病状が進行して、治療が困難になります。ましてや基礎疾患があったり、臓器機能が衰えていると予備力がなく、非常に厳しい状態になります。
このようにARDSはとても怖い病気です。
それが故に如何にARDSにならないようにするのか?それが新型コロナウィルス感染症対策のキーになるものと考えています