新宿NSビルスカイクリニック

医学に基づいて食を中心として日々の生活から健康を考えるブログ

 


便秘とは、便中の水分が乏しく硬くなる、もしくは便の通り道である腸管が狭くなり排便が困難または排便がまれな状態をいいます。通常は1日1-2回の排便がありますが、2-3日に1回の排便でも排便状態が普通で本人が苦痛を感じない場合は便秘といいません。しかし毎日排便があっても便が硬くて量が少なく残便感がある場合や、排便に苦痛を感じる場合は便秘といえます。

便秘を引き起こす腸管の機能的異常の要因には「不規則な食事・生活」「食物繊維・水分・脂質などの摂取不足」「低栄養」「ビタミン欠乏症」「全身衰弱」「緊張・恐怖・悲しみなどの精神的要因」「神経障害」「浣腸や下痢の乱用」「体質」「職業性(便意があっても排便できない職業の人)」「便意を抑制する習慣」などがあります。

便秘になると便通不良になるばかりでなく、腸内容物の腐敗などが進行して有害物質が生成され、下腹部不快感・膨満感・腹痛・悪心・嘔吐などの障害をきたす恐れがあります。
便秘は臨床的に「機能性便秘(腸管機能の異常による便秘)」と「器質性便秘(腸管の疾病による便秘)」の大きく2つに分けられます。このうち機能性便秘は、さらに弛緩性便秘・痙攣性便秘・直腸性便秘の3つに分けられますが、日本人の常習性便秘の約2/3は弛緩性便秘といわれています。

弛緩性便秘の予防や治療には、規則正しい日常生活・食事・排便・適度な運動を心がけましょう。栄養・食生活の面からは、以下に示すポイントについて出来ることから取り入れてみましょう。

食物繊維を多く含む食品を積極的に食べましょう。便量を増大させ、排便リズムを回復させます。食物繊維を多く含む食品は、たけのこ・緑黄色野菜・ごぼう・さつまいも・ふき・七分搗き米・大豆・ひじき・かんぴょう・切干大根などがあります。
冷水・冷牛乳を適切に摂って、胃・大腸の反射を促しましょう。特に起床後の摂取が勧められます。牛乳も小腸ラクターゼ活性の低い人には効果があります。水分は便を軟らかくして排便を容易にする働きがあります。
適度に脂質を摂りましょう。脂質に含まれている脂肪酸が大腸を刺激します。
適度の香辛料やアルコール・酸味類・エキス分(肉・魚のうま味分)は、排便を促します。
糖分の多い食品は、腸管内で醗酵しやすく大腸運動を高めます。糖分の多い食品には、はちみつ・砂糖・水あめなどがあります。
パインアップル・いちご・りんご・牛乳・ヨーグルト・プルーン・梅干など有機酸を多く含む食品を積極的に摂りましょう。
腸管内で醗酵し、ガスを発生させやすい豆類・いも類・かぼちゃ・くりなどを摂りましょう。
米飯の難消化性でんぷんが食物繊維と同様の働きをします。白米より七分搗き米・胚芽米・玄米のほうが食物繊維の量も多くなり、より効果があります。
食事量の確保も大切です。高齢者などは特に、食事量の過小が便秘の原因になっていることがあります。
これらのポイントに留意するとともに、水分を十分に補給しましょう。特に朝食を欠食しないようにして規則正しい食生活を心がけましょう。それから薬物に頼らず、栄養食事療法・運動療法を根気強く続けて自然な排便リズムを回復することが理想的なので、朝食後など決まった時間での排便を、たとえ便意がなくても毎日続けて習慣化させましょう。

痙攣性便秘は、腸管の自律神経失調によりおこります。大腸の痙攣性収縮によって便の輸送が障害されます。大部分は過敏性腸症候群です。精神的な影響を受けやすく、消化器症状以外の不定愁訴自律神経失調症状を伴うことがよく見られます。
便秘は間欠で若年者や中年女性に多くみうけられます。予防や治療には、規則正しい日常生活・食生活を心がけましょう。また、過労・ストレスが原因であることも多いため、それらの解消に努めましょう。ただし運動は避け、休養は十分にとりましょう。栄養・食生活の面からは、以下に示すポイントについて、出来ることから取り入れてみましょう。

食物繊維は便量を保つために制限はしませんが、水溶性食物繊維の多い、いも類・果物類・海藻類といった食品を摂取するように努めましょう。
酸味・香辛料・アルコール飲料・カフェイン飲料・エキス分などの刺激性食品は避けましょう。
硬い食品・濃い味付け・炭酸飲料・過食などによる物理的刺激は避けましょう。
脂質の摂取は控えましょう。特に揚げ物は控えましょう。
過熱・過冷の食品摂取量は控えましょう。
ガスを発生させやすい食品は控えましょう。
食事量を確保しましょう。
直腸性便秘は、摘便・坐薬・浣腸などにより便塊を除去したあと、弛緩性便秘と同様の対応をとりましょう。

器質性便秘の場合は、結腸癌・直腸癌・イレウスなどの腸管における気質的な疾患の根本的な治療が必要です。