新宿NSビルスカイクリニック

医学に基づいて食を中心として日々の生活から健康を考えるブログ

胃潰瘍⑤ ピロリ菌と胃がん発生のリスク

前回ピロリ菌と胃潰瘍、十二指腸潰瘍との関連性についてお話をしましたが、ピロリ菌の感染は胃がんの発生と関係があることはよく知られています。

様々な検討がなされていますが、ピロリ菌の感染は胃がんの発生と関連性があり(5倍増加すると言う報告がある)ピロリ菌感染による慢性胃炎が進行すると明らかに胃がんの発生は増加します。

それ故に今日で胃がん検診の一つとして、ピロリ菌感染の有無(抗ピロリ菌抗体の検出)と慢性萎縮性胃炎の程度(ペプシノーゲン測定)が胃がんリスクを評価する検査として実施されています。

ピロリ菌を除菌して、慢性胃炎を治療することによって胃がんの発生リスクを軽減することも知られています。

このようにピロリ菌感染による慢性の胃炎は胃がんの発生と強い関連性があり、胃の内視鏡検査とピロリ菌感染のチェックは胃がん検診として有用です。

*食べ物の消化に関与する『ペプシノゲン』という物質の血中濃度を測定することで胃粘膜の 萎縮(老化)の状態を客観的に調べる検査です。

 

胃がんリスク分類ABC分類 》
ヘリコバクター・ピロリ抗体価検査(H) 

ペプシノゲン検査(P)
A群: H&P (-) ピロリ菌感染なし、萎縮もなし

B群: H(+) P(-) ピロリ菌感染初期、萎縮なし

C群: H(+) P(+) ピロリ菌感染あり、萎縮もあり

D群: H(-) P(+)ピロリ菌もいなくなるほど萎縮進行
A群
健康的な胃粘膜です。
胃がん発症リスクは極めて低いです。 念のため、5年に1回は内視鏡検査を受けましょう。
B群
少し弱った胃粘膜です。
少数ながら胃がん発症リスクがあります。一度、内視鏡検査を受けましょう。また、異常が見つからなくても2~3年に1回は内視鏡検査を受けましょう。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍などに注意が必要です。
◆ピロリ菌除菌治療をお勧めします。
C群
弱った胃粘膜です。
胃がん発症リスクが高いタイプです。一度、内視鏡検査を受けましょう。
また、異常が見つからなくても、1年に1回は内視鏡検査を受けましょう。
◆ピロリ菌除菌治療をお勧めします。
D群
かなり弱った胃粘膜です。
胃がん発症リスクが極めて高いタイプです。必ず、内視鏡検査を受けましょう。また、異常が見つからなくても、1年に1回、内視鏡検査を受けましょう。
◆血液検査でピロリ抗体価が陰性でも、他の検査で陽性の場合はピロリ菌除菌治療をお勧めします。
E群 : ABC分類対象外。
ヘリコバクター・ピロリ菌除菌後の方は、E群 (除菌群)として定期的な内視鏡検査を受けましょう。
胃がんリスク検査において以下に該当される場合は、正しい判定ができない可能性あり

食道、胃、十二指腸疾患で治療中の場合
胃薬や抗生剤を1ヶ月以内に服用していた方
胃切除をされた方、腎不全の方(目安として、クレアチニン3mg/dl以上)ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療を受けた方

f:id:gokurakujiclinic:20201102213242j:image