新宿NSビルスカイクリニック

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胃潰瘍④ 慢性胃炎とヘリコバクター・ピロリ感染のお話

今回は胃潰瘍の発生に関わるもう一つの要因、ヘリコバクター ピロリ菌の感染についてのお話です。これに関しては歴史的な経緯も含めてご紹介したいと思います。

実はかなり以前から胃の粘膜に慢性的な炎症が起きることは知られていました。

(その進行度を示すものが木本・竹本分類です)

これは進行性で中々治りにくい病気で、その原因は長年不明でした。

*日本人には胃がんが多かったので、昔の先生方は胃の病気についてよく研究されていたました。

その原因を解明したのが、オーストラリアの病理医ロビン ウォーレン博士です。

彼は1979年に炎症を起こした胃粘膜の中にその病原体であるヘリコバクター ピロリ菌を発見したのです。

昔は強酸の環境下である胃の中に細菌などの病原体は繁殖しないと思われていましたが、彼の発見で慢性胃炎を引き起こしているのはピロリ菌感染によることが解明されました。

またその発見によって今まで日本において研究されていた慢性胃炎の事象がスッキリとまとめられるようになりました。

(逸話によると彼は自分自身が実験台となってピロリ菌を飲んで、胃炎が起きることを証明したらしいのです。正に強い信念、凄い執念だと思います)

今日では多くの胃がん(ほとんど)の発生がピロリ菌感染と関係していて、その他の病気(MALTリンパ腫、特発性血小板減少症など)との関連性も分かってきました。

そして話を戻しますと、ピロリ菌の感染は胃粘膜に慢性の胃炎を引き起こし、それが続くと胃の粘膜は萎縮してしまいます。またそれが進行してしまった場合には胃液の分泌が低下してしまうことになります。

ピロリ菌が感染していると胃潰瘍や十二指腸潰瘍になりやすく、また潰瘍も酷くなる可能性があります。

このような経緯もあって、今日、成人のピロリ菌感染は除菌することが勧められています。

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