常在細菌叢の不思議
このシリーズのお話が続きますが、私達の身体の中における細菌叢のバランスは本当に不思議です。
皮膚や気道や腸、果ては生殖器に至るまであらゆるところに細菌は存在していて見事なバランスを保って存在しています。
体調を崩して細菌叢が乱れても、また元のように戻るようになっています。
確かに私達の身体は常に一定の環境を保つように働いていますが、私達が微生物の動きまで完全にコントロールすることはできません (大体別の生命体なのですから) 各臓器において細菌が一定の割合を保って一定の数を保って生息しているということは驚くべきことです。
そう考えるとやはり私達は健康的で強い身体を作るためには細菌を敵対視するのではなく、彼らを味方にし、ベストな環境を整え、細菌達に頑張ってもらうと言う考え方もありではないでしょうか?
アトピー性皮膚炎と皮膚の常在細菌叢との関係
https://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2015/osa3qr000000t3i7-att/20150422_nagao.pdf
つい数年前、慶応義塾大学の皮膚科の先生が、アトピー性皮膚炎と皮膚における黄色ブドウ球菌の関連についての研究を発表されていました。ある意味表皮にいる常在菌である黄色ブドウ球菌の状態が、皮膚の炎症や私達の免疫応答に関わっていると言うこと。今までアトピー性皮膚炎は私達の体内の免疫機構に問題があると言うことから、その治療に関してはステロイドを始めとする、いろんな免疫抑制剤の使用がメインでしたが、皮膚における常在細菌叢を見直し、その環境を整えるという新しい見地が伺われるのではないでしょうか?
まだまだ未解決な問題ですが、興味深いトピックですね
私達と細菌の共存関係
以前から話しているように、私達は様々な細菌と無意識に絶妙な共存関係を保っています。私達の体内には多種多様な細菌がバランスを取って生息しています。人体に有害な病原菌が生息しないように、また特別な菌が無秩序に増殖し続けたりしないように各臓器における細菌の状態は制御されています。
人体は細菌に対して、見事な調整能力を持つ精密な生命培地と言えるかも知れません
温度や湿度、栄養状態や細菌を制御する免疫機構など私達の身体は、いい細菌の状態を維持するための環境を整えています。
細菌は私達の身体にも有益な活動をしてくれていて、私達が細菌の働きを利用しているとも言えるでしょう。
もし私達が身体のコンディションを崩してしまうといい細菌状態を保持できなくなり、様々な病気を引き起こすことに繋がってしまいます。
だからこそ健康でタフな身体を作るということは言い換えれば、人体を細菌にとっていい環境を整えると言うことになるのではないかと考えています。
これから各臓器について、各論的なお話を進めましょう!
医療の教科書 その2 医者の勉強について
医者の仕事とは何でしょう?簡単に言えば、医術を持って病気になったり、傷ついて苦しんでいる人を癒し救うことがその仕事です。
残念ながらいくら科学技術が進んで、いろんな検査や薬や手術が開発されても病気はなくなりません。だから医者が必要とされるのです。
医師には、しっかりとしたマインド(humanity)と、自然の摂理に合った正しい生命科学の知識と確実な技術と人のことを知る人間学が要求されます。
私達は死ぬまで学び続けなければなりません。
そしてそこで得た知識や技術や経験を実社会に還元することも私達の大切な役目です。
こう言う仕事ができる立場にいることは、本当にありがたいことだと思います。
正常な細菌叢(bacterial flora)について
体内な外界と繋がる場所 (皮膚や口腔、消化管や気道、また陰部に至るまで様々な臓器)には、いろんな細菌が常在しています。
その細菌達はその数や割合など絶妙なバランスを保って生息しています。
それぞれの臓器においては、これらの常在菌が、他の病原性のある細菌の繁殖を抑えたり、また実際、いろんな臓器において、様々な物質の分解や代謝の役割をしたり、また私達の身体において重要な免疫機構の調整をしたりしています。
それが故に体調を崩したり、また不用意に抗生剤を長期投与してしまうと、この正常細菌叢を壊し、人体にいろんな悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。
私達は、もっとこの微生物達とのより良い共存関係について知る必要があると考えています
かかりつけ医の選び方 その5
アクセス
病気や怪我はいつなるかわかりません。またもし通院するとなったらアクセスはとても大切です。その意味でも交通の便は重要です。都内なら駅近などもその条件になるでしょう。
またソフト面でのアクセスも大事です。前に自分の診療情報の引き出しについて書きましたが、常に便利に簡単に病院に問い合わせができることもが望まれます。
昨今の情報技術の進歩から、スマホやインターネットを使って病院に問い合わせできることは、患者さんにとっても有益になると思います。これは私達、医療者もユーザー目線で考えなければならない課題です