新宿NSビルスカイクリニック

医学に基づいて食を中心として日々の生活から健康を考えるブログ

抗ガン剤とその効果判定試験について

f:id:gokurakujiclinic:20180217225357j:plain

癌に対する抗ガン剤にはいろんな種類がありますが、基本的には、遺伝子や細胞内代謝に障害を与える細胞毒性を持つ薬剤です(それ故に抗ガン剤は癌細胞だけではなく、正常細胞にも少なからずダメージを与えてしまいます)

https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy.html

また抗ガン剤の効果判定をするためにはいくつかの試験があるのですが、細胞レベルでの試験においては、癌細胞を培養し、そこに濃度勾配をつけて抗ガン剤を投与し、癌細胞の増殖抑制や細胞障害性をいろんなアッセイ(MTTアッセイやATPアッセイなど)で評価する方法が一般的です。

私もいくつかの抗ガン剤を用いて何回もこのアッセイを行ったことがありますが、この実験においては投与する抗ガン剤の濃度が、かなりの高濃度であるのことと、意外に新しく開発された抗ガン剤より昔からある抗ガン剤((アルキル化剤など)の方がシンプルに細胞障害性が強いということに何処か違和感を感じました

つまり作用機序でうたわれているような効用効果や実際の癌細胞に与えるダメージは実際には目に見えにくく、生きた動物レベルの実験においては、さらに、実際のところ生体内において抗ガン剤が癌にどのような効果を示しているのか?非常に分かりにくいということです。

これが抗生剤などの他の薬剤と大きく異なる点であり、化学療法を考える上で複雑なポイントだと思います

抗がん剤について その2 総論

f:id:gokurakujiclinic:20180216235600j:plain


私は化学療法のプロではありませんが、今まで抗ガン剤に関する基礎研究から、動物実験、実際、臨床での化学療法の実施をしてきました。まず最初に言えることは癌治療は、それ程シンプルでは無いと言うことです。悪性腫瘍の種類も白血病のような血液癌から、肉腫のような特殊な悪性腫瘍、そして肺がんや胃がんや大腸癌や膵臓癌、乳癌や子宮頸がん、体癌、卵巣がん、または腎がんや前立腺がんや膀胱がんなどの一般的な固形癌まで、またその患者さんの状態や病態(進行度)も症例によって様々です。ただ今の私に言えることは一般的な抗ガン剤(特殊な抗体や分子標的薬を除き)は基本生体にとって細胞障害性のある毒物です。だからこそ抗ガン剤で固形癌を完治するという目標の立て方には無理があります。特殊な場合を除き、あくまで腫瘍の増殖や転移などの進行制御が目的だと受け止めています。そういう意味からも、腫瘍が進行し宿主が弱ってきたような時に、きつい化学療法を行うとかえって予後が悪くなるケースが見られます。これから抗がん剤の種類、効果効用、いろんな種類の固形がんに対する化学療法についても提議していたいと思います。だからと言って一切の化学療法をしないで、いきなりビタミンの大量療法やエビデンスのない免疫療法に走るのも危険だと思います。私たちは、今の患者さんの現状をよく知った上で個別に選択をしていくのがベターなのかなと考えています。

Dr KAZ

あなたは抗がん剤を使いますか? その1 エピローグ

 

f:id:gokurakujiclinic:20180216235600j:plain

皆さんこんにちは現役医師のKAZです。先日知り合いの方のブログに抗がん剤の是非ついての書き込みがありました。

私は化学療法のプロではありませんが、今まで抗ガン剤に関する基礎研究から、実際に臨床の現場において化学療法の実施もしてきました。しかし化学療法と言っても、がんの種類や患者さんの病態やたくさんのプロトコールがあって化学療法がいいか悪いとは一概には言えません。私自身いままで勉強をしてきたにもかかわらず、この課題に対して未だ明らかな答えを持っていませんが、これから今までの経験を通して、この重要課題についての道標として一つの問題提議をしていきたいと思います。

私達があらゆる医療を受ける時には、それを選択する際において先ずより正しい知識が大事です。このブログが化学療法を受ける患者さんにとって抗がん剤を考えるいいきっかけになることを強く願っています

Dr KAZ

 

目指す医療

以前から周りの人達にお前は具体的にどんな医療がやりたいんだ?と聞かれていますが、その答えが見つかりません。もしかしてその答えは既存のものではなく、自分で新しく創造するものなのかもしれません。

生を知る

皆さんは、生命や病や死についてどれくらいの事を知っていますか?

こういうことを書くと何難しいこと言ってんじゃねぇよ、知るかそんなもん、そんなこと考えてる暇なんかねぇよと言う声が聞こえてきそうですよね。全く構いません

でも身体のことを知らないと健康にはなれないし、病気や死の事を知らないと、素敵には生きられませんよね。私は今まで25年以上、患者さんの前に立って、いろんな病気や死の場面に接して、その事を痛感してきました。病気や死の姿は一つですが、その捉え方は人それぞれ違います。正に人生いろいろですね。

自分が自分の身体と頭を使って人生をどう生きるかは自分次第だと思います

だったらより正しい知識を知り考えることが豊かで幸せな人生に繋がるとは思いませんか?

医者でもいろんなことを言う医者がたくさんいます。そんな医者を選ぶのもあなた自身です

私はこれから私なりに得た知識や知見を更にバージョンアップさせながら望む人たちに伝えていきたいと思います。

聞くもよし、聞かざるもよし、その受け止め方や考え方もあなた方の自由です。

You can want it that way.

関心のある方はお越し下さい

 f:id:gokurakujiclinic:20180211173553j:plain

 

米国留学の想い出 その1

私は今から14年ほど前、米国に留学して癌に関する基礎研究をしていたことがありました。その業績も、研究の仕事自体も今の仕事には全く生かされていませんが、自分の中の引き出しの中においてあった一つの軌跡です。ふと先日、そのことを思い出し、引き出しの中から出して見てみました。

その時には癌というのは一体どんな病気なんだろう。癌の増殖や浸潤や転移という現象はどのようなことなのだろう?どうしたら私たちは癌を治すことができるのだろう?何かそこに新しい真理が見つけられないだろうか?と躍起になって研究者としては素人レベルのスペックで実験を繰り返しました。結果的に研究室からPaperを数本Publishさせていただきましたが、今でも十分な仕事は成し終えていないなと受け止めています

その研究の主な内容は、生体内における癌の動態観察。いろんな種類のがん細胞を培養し、そこにレトロウィルスを用いて蛍光蛋白(GFP, RFPなど~この蛍光蛋白質自体が後にノーベル医学生理学賞に選ばれました)様々な細胞小器官に発現するように遺伝子を導入して可視化して、その細胞を実験動物に移植して生体内での癌細胞の動態を観察するといった極めてシンプルなものでした

そこで細かい遺伝子解析やタンパク質解析をして癌細胞の性質の解明に至るまでにも至りませんでしたが、いかに癌細胞が正常細胞とは違ってタフな化け物的な細胞(無限に増殖して、どんどん変化し続け、いかに過酷な環境でも生き延びる細胞)であることは実感しました

また癌の診療に重要な浸潤や転移という現象は、移植モデルでは単細胞の移植では簡単には見られず、組織片移植や移植前に前処置を行うと癌が生着しやすいこともわかりました

実はこの時に私が抱えた最大の問題があってそれは今も何一つ解決できていません

それは抗がん剤を用いて癌を治すことができるのか?という非常に重く重要な課題です。

抗がん剤の治験において、抗がん剤の試験管内と生体での反応(効果)は全く異なります。いくつかの実験を通じてそのことを痛感しました

今の段階ではこれ以上書くことは難しいですが、この問題もいつの日か少しでも自分なりにアプローチしてみたい課題です

 

http://www.metamouse.com/Bouvet, Tsuji-2006.Cancer Res.pdf

Cancer Res. 2006 Jan 1;66(1):303-6.
Dual-color imaging of nuclear-cytoplasmic dynamics, viability, and proliferation of cancer cells in the portal vein area.
Tsuji K1, Yamauchi K, Yang M, Jiang P, Bouvet M, Endo H, Kanai Y, Yamashita K, Moossa AR, Hoffman RM.
Author information
Abstract
We used dual-color in vivo cellular imaging to visualize trafficking, nuclear-cytoplasmic dynamics, and the viability of cancer cells after their injection into the portal vein of mice. For these studies, we used dual-color fluorescent cancer cells that express green fluorescent protein (GFP) linked to histone H2B in the nucleus and retroviral red fluorescent protein (RFP) in the cytoplasm. Human HCT-116-GFP-RFP colon cancer and mouse mammary tumor (MMT) cells were HCT-116-GFP-RFP in the portal vein of nude mice. The cells were observed intravitally in the liver at the single-cell level using the Olympus OV100 whole-mouse imaging system. Most HCT-116-GFP-RFP cells remained in sinusoids near peripheral portal veins. Only a small fraction of the cancer cells invaded the lobular area. Extensive clasmocytosis (destruction of the cytoplasm) of the HCT-116-GFP-RFP cells occurred within 6 hours. The number of apoptotic cells rapidly increased within the portal vein within 12 hours of injection. Apoptosis was readily visualized in the dual-color cells by their altered nuclear morphology. The data suggest rapid death of HCT-116-GFP-RFP cells in the portal vein. In contrast, dual-color MMT-GFP-RFP cells injected into the portal vein mostly survived in the liver of nude mice 24 hours after injection. Many surviving MMT-GFP-RFP cells showed invasive figures with cytoplasmic protrusions. The cells grew aggressively and formed colonies in the liver. However, when the host mice were pretreated with cyclophosphamide, the HCT-116-GFP-RFP cells also survived and formed colonies in the liver after portal vein injection. These results suggest that a cyclophosphamide-sensitive host cellular system attacked the HCT-116-GFP-RFP cells but could not effectively kill the MMT-GFP-RFP cells.

 

 

 

 

 

諦めなければ道は開ける

f:id:gokurakujiclinic:20180202203822j:plain

私は今まで医療の現場で、厳しい状況に何度も直面してきました。今日はその一例を紹介致します

私が今から7〜8年前に西日本の小さな病院で働いていた時に、当時40歳代の慢性肝炎を患っている患者さんを受け持ちました。ある時、その患者さんが食道静脈瘤の破裂を起こして、ショック状態になり(内視鏡的に止血はしたのですが)末期肝不全に陥りました。黄疸が進行し、意識障害が現れ、やがて肝腎症候群を発症して、尿はシャットダウンになりました。しかし患者さんは生前、まだ生きたいという強い希望があり、肝移植手術も希望されていました。

そこで諦めることなく、最期まで、とことん治療を続けることとなりました

血液浄化を開始(持続的血液透析濾過をしながら血漿交換を繰り返しました)

感染対策をしながら、栄誉サポートもして、待ち忍びました。ご家族が高齢でドナーになれない為、死体肝移植に登録をしました。しかし状態は徐々に悪化し、度々消化管出血を繰り返し、その度ごとに止血を行い輸血をしながら待ちました。

さすがの私も、死体肝移植のレシピエント候補になるのは難しいので今回は厳しいか?と思っていましたが、頑張って生き続けている患者さんを見るたびにもしかしたらと思うようになりました。

患者さんの病状を移植ネットワークに適宜、報告をしながら医療スタッフの仲間と日々頑張って待っていたある日、一月ほど経って、移植ネットワークから、その患者さんが移植候補者になったと連絡がありました。

私達はびっくりしながら直ぐに準備をして、肝移植ができる大学病院に患者さんを搬送しました。

これは正に奇跡という確率です

移植手術を終え、2月ほどして患者さんが、病院に挨拶にきました。

肝移植は無事成功し、腎機能も完全に回復されたそうです

(肝腎症候群は肝臓が戻ると腎機能は回復するんだなと改めて分かりました)

正直、一番ドン底の時は、周囲の見方も冷ややかでした。私達の戦力は乏しいために、インテンシブケアのため、近くの高次機能病院に転院を依頼しても全て断られました。

しかし皆が最期まで諦めなかったことがこの結果に繋がったのです。

これは実例です。

医療だけではないですが、人生投げたらアカンですね