新宿NSビルスカイクリニック

医学に基づいて食を中心として日々の生活から健康を考えるブログ

食を考える その2 食欲について

(定義)

食欲とは何でしょう?

私達はどのような時に食欲を覚え、またどんな時に食欲がなくなってしまったりするのでしょう?

その生理的メカニズムに基づいて紐解いていきたいと思います。

食欲は食物を食べたいと言う願望であり、睡眠欲及び性欲と並ぶ人間の三大欲求の一つとされています(生物としての自然欲求)

*全ての高等生物に存在し、新陳代謝を維持する為に必要なエネルギーを取り入れるのに役立つ。食欲は、消化管、脂肪組織及び脳の相互作用により調節されている。食欲の調節が正常にできなくなった場合、拒食症または過食症の原因となり、栄養失調や肥満につながる。

(調節)
編集食欲の調節機能については、過去に多くの研究の対象となっており、1995年には、食欲を減退させるように振る舞うホルモン、レプチンが発見された。胃腸管、多数のホルモン、中枢神経系及び自律神経系が食欲の調節に関与しており、非常に複雑な過程であることが後の研究により発見された。

 

エフェクター
編集視床下部の弓状核に存在する神経ペプチドY (NPY) とアグーチ関連ペプチド (AGRP)を産生する神経細胞 が食欲亢進に、αMSHとCARTを産生する神経細胞が食欲抑制に決定的な役割を果たす。 また、視床下部外側野に存在するメラニン凝集ホルモン(MCH)およびオレキシンを産生する神経細胞も食欲の制御に関与している。

 

センサー
編集視床下部は、レプチン、グレリン、PYY3-36(ペプチドYY)、コレシストキニンなどの多くのホルモンを通して外部からの刺激を感知し、影響を受ける。 それらのホルモンは消化管と脂肪組織によって生産される。これらは体重を一定に保つための生理的な機構であり、上記のレプチンや血糖値などの影響をもとに食欲を適切に制御している。一方で病気の人の場合は、 腫瘍壊死因子アルファ (TNFα) 、インターロイキン1と6、及び副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン (CRH) などが食欲を抑制する。

さらに、同じく視床下部によって制御されている体内時計も、食欲に影響をあたえる。視床下部の背外側核には、毎日の食事の時間に対応して食欲を促す中枢が存在している。また、他の脳の座、とくに大脳辺縁系から視床下部への投射も食欲を制御する。これは、うつ病とストレスで、食欲が何故変化してしまうのかを説明する。

また、「美味しい」食事を考えればわかるように、食欲は報酬の一種でもあり、報酬系の影響も受けている。そのために、上記の視床下部による恒常性の制御を逸脱して過食から肥満に至る場合もある。

 

病気での役割

 

食欲の調節障害が拒食症、神経性大食症、及び無茶食い障害の原因となっている。

 

薬理学
編集食欲の制御は、ダイエット薬の目標のひとつである。 初期の食欲減退薬は、フェンフルラミンとフェンテルミンであった。 近年登場したシブトラミンは、中枢神経系におけるセロトニンノルアドレナリン水準を増加させる。また、2006年にカンナビノイド1 (CB1) 受容体を阻害するタイプのリモナバンがEUにて認可された。販売元のサノフィ・アベンティスが行った長期間のフィールドテストの結果によると、50%以上の参加者に有意な体重、悪玉コレステロール等の減少が見られた。また、1年以上服用した参加者の一定数以上に体重の復元が見られないため、シブトラミン及びマジンドール系のダイエット薬に代わる薬となることを期待されている。

 

高タンパク質の食事
編集高タンパク質の食事を摂取すると、飢餓抑制ホルモンであるペプチドYY(PYY)のレベルが増大し、高脂肪、高炭水化物の食事と比較して、空腹感も大幅に抑えられる[1]。

 

 

私達はお昼時になるとお腹が空き、食事がしたくなります。このような食欲はどのように調節されているのでしょうか。

まず、私達の食事について考えてみましょう。動物は、自ら炭酸同化をしてエネルギーのもとを作り出すことはできない従属栄養生物です。そこで、エネルギーや栄養を得るために食事をします。しかも、食べていない時間もエネルギーを使えるように貯蔵できる形に変換し、筋肉、肝臓、脂肪細胞など に貯蔵しています。空腹時はこれらの貯蔵されたエネルギーが使われます。

さて、食欲はどこで調節されているのでしょうか。食欲の調節には脳が関与しています。脳の視床下部には2つの中枢があり、「お腹が空いたな」とか「お腹がいっぱいだな」などの信号をキャッチします。すなわち、視床下部に摂食中枢と満腹中枢があり、胃が空っぽになり、胃がキューっと収縮し、お腹がグーと鳴ったら、摂食中枢が働いて食欲がわきます。逆に、胃が食べ物で満たされ拡張したり、食べ物が消化して血液中のブドウ糖濃度が最も高くなる時は満腹中枢に働きかけ、摂食を抑えます。

一方で、脂肪細胞に脂肪が蓄積すると、「レプチン」というホルモンが分泌され、視床下部にある受容体に働きかけ、食欲を抑えます。それと同時に交感神経に作用して、エネルギー消費を促します。このようにして、動物は食べる量を抑え、エネルギーの過剰な蓄積を防ぐことができるのです。

このメカニズム以外にも動物の食欲は様々な調節が行われていて、ストレスが関係する調節もあり、まだ全ては明らかになっていません。将来は、食欲を調節する薬ができるかもしれませんね。